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シネマインタビュー

『猫なんかよんでもこない。』インタビュー

2016年1月30日(土)に公開される『猫なんかよんでもこない。』の映画監督・山本透監督と原作者・杉作先生のお二人にインタビューをしに行ってきました!

Q.監督自身、猫好きということをお伺いしましたが、数ある作品の中でこの作品を選ばれたきっかけは?

監督 この原作の1巻が出たときに薦められて読んだのが一番最初の出会いだったんですが、正直いろいろと衝撃的でした。4コマチックでポップな可愛らしい絵で描かれているのに、いろんな要素が盛り込まれていた。例えば猫と人間が「ペット」としてではなく、「生き物」と「生き物」として対等に描かれているリアリティであったり、単なる「猫あるある」だけでなく、生き物を飼っていく上で「可愛いペットを飼っています」という綺麗事だけじゃない部分、「去勢」というすごく難しいテーマであったり。あと、ミツオ(主人公)が挫折して、そこから這い上がっていく過程はとてもドラマチックで、映画としても力強いものになると思った。自分も猫を飼っているし、猫の奔放さはよく知っているのでいろいろと難しいだろうとは思ったんですが、これを映画にする意味は必ずあるし、ぜひやってみようと思ったんです。

Q.映画化に向けて、ストーリーを構成する中で特に重要視されていた点は?

監督 原作の持っているほんわかとした優しい空気感を壊したくなかったので、原作にかなり忠実にしました。登場人物をいっぱい足しすぎて、物語があっちこっち枝分かれしないようにしたかった。1巻だけではさすがに難しかったんですが、試行錯誤しているうちに(原作に)ウメさんが出てきて、「これは良い!」と思いましたね。ウメさんが出てきてから、ミツオの周りを支える人というか、外側から観る人が一人できたことで、脚本としてはスムーズに構成できたかなと思うし、原作のムードもあまり変えずに済んだのではないかと思います。

Q.映画化の話を聞いた時の心境は?

先生 実写版と聞いて、できるのかなあと戸惑いました。あまりストーリー性のある漫画ではないのに、どうやって一本の映画にするんだろう、ほんとにできるのかなあという不安はありました。でも「(映画に)なったら嬉しいな」というのは大前提としてありましたね。

先生
Q.そんな不安を経て、完成後の感想は?

先生 かなり複雑でした。最初は自分のドラマに入り込みすぎていたんですが、途中からは映画の中に入っちゃってたので、自分でもすごく面白かったです。個人的にも映画がすごく好きで、見ているうちに入り込んじゃって夢中になれる、っていうところが好きなんです。最初はすごく「どんな感じだろう」と構えて見ていたんですが、途中からそれがなくなって、自分の作品なのに入り込んじゃった。この映画を作られた監督とか役者さんとか、本当にすごいと思うし、いいものができたなと思いました。

Q.題名の通り、「よんでもこない」猫たちと映画を撮っていく中で、いかに猫とのコミュニケーションを築いたのでしょうか?

監督 何かやらせると、やはり「やらされてる」感が絶対伝わってしまうんですよね。緊張していれば緊張している顔になって怖さが出るし、耳がビーンってなっちゃうので、猫好きの人が見たら一瞬でこの映画を大嫌いになってしまうだろうと思った。なので、どれだけ何かをさせずに済むか。要するに、猫とどれだけ寄り添えるかというのを、少ない撮影時間の中で考えました。小さいのから大きいのまでいっぱい居たので、みんなの様子を見ながら、お腹が空いたらお腹が空いたシーンを撮って、眠くなったら寝てるシーンを撮って、遊びたくなったら遊ぶシーンを撮る、という感じで進めていきました。全部が全部そういう訳にはいかないのですが、順番に撮るというよりは、猫の様子を見ながら猫に合わせて撮っていましたね。役者もスタッフも本当に大変だったと思います。あと、猫を早めにアパートに慣らすために遊ばせて、自分の好きな場所というのが自然とできてから撮ったりとかもしていました。そういう風にやらなきゃダメだったと思うので。

監督
Q.まさに、ありのままの自然体の姿だったというわけですね。

監督 そうですね。最初の1・2日目くらいのときは、一番小さい子猫のデビュー戦だったので、惨敗したんですよ。「ここまで思い通りにならないか」と、わかってはいたけれど打ちのめされました。全然フレームの中に納まってくれないし、カメラ構えて「よし、いこう」と思った瞬間ピューンってどっかいったり、「んじゃここでやるか」と思ったらまたどっか行っちゃうし。どうしても2匹の絵が撮りたいのに、絶対どちらかが外れていくから、2秒すら絵の中に入ってくれなかったりだとか。だから「やばい」と思って、「手をつけちゃいけないものに手をつけたんじゃないか?どうしよう俺…。みんなごめん…」みたいな。もうそこからは、より一層猫に寄り添っていくしかないなと思いました。

先生 『あきらめるな、俺』ってやつですよね。
監督 いや、それは本当に恥ずかしいからやめてください(笑)
先生 監督の台本に書いてた言葉なんですけど、それを見て感動しました。
監督 酔っぱらって、おもわず書いちゃったんですよね。
先生 でも、それくらい大変なものだったんだなと思って。人に見せるために書いてるんじゃなくて、自分に見せるために書いてたものなんで、その台本見たときは「すごいな」と思いました。
監督 本当に恥ずかしいっす(笑)でも、「あきらめたらあきらめたものしかお客さんに届かないから、あきらめるなよ」ってことを自分に言い聞かせて、<監督:山本透>って書いてるそのページに書き殴ったんですよ。あきらめないで、とにかく最後までやるぞって気持ちを込めて。

Q.一番伝えたかった、こだわりのシーンは?

監督 最後の方にある、猫の方からミツオに寄り添っていくカットがどうしても撮りたくて、何時間何十時間かかろうが、撮影が延びようが絶対撮ってやるぞと意気込んでいたんですが、実はそんなに時間がかかりませんでした。クランクアップくらいの一番最後の方に撮影したんですけど、それが自然と撮れたってことに本当に奇跡的なものを感じました。猫ってそういうことをしたくなければ寄り添っていかないものなので、自然と行ったってことは、風間くん(ミツオ役:風間俊介さん)とかスタッフの想いが猫にもちゃんと伝わってたんだなと、どこのシーンかは言えないですけど、そこの芝居は本当に良かったなと思っています。

Q.先生の中で印象的なシーンは?

先生 見ていていいなと思ったのは、風間さんからちゃんと生活してる感じが背景に見えたことですかね。毎日生活してる感をすごく感じられたことが、自分の中では印象的でした。本当に毎日寝泊まりして、そこで暮らしてるというような印象がアパートの中のなんてことないシーンから感じられて、いいなぁと思いました。
監督 部屋は結構シンプルにしましたけどね。実際に先生が暮らしていたアパートの部屋よりは綺麗になっています(笑)

取材中
Q.監督ならではの撮影に対する想いを教えて下さい。

監督 1ヶ月もない、少ない撮影期間で撮っていかなくてはいけないという時は、役者の方と事前にコミュニケーションをとっておきたいですね。現場であまり「ああいうのもやって、こういうのもやって」と迷いたくないし、向かってるものが明確にある方がいいので、事前の準備はしっかりとやっておきたいです。衣装合わせとか顔を合わせる度に一個一個確認していくというのを常に心がけていました。沢山コミュニケーションをとっておいた方が現場で迷わなくて済むし、短い言葉だけで指示が伝わるので。豊かに、あっちもこっちも探りながら撮影していく映画作りもすごく素敵だとは思うけど、今僕がやっている方法は明確に目標を持って、そこへ最速で辿り着くためには何ができるかっていうやり方です。

Q.監督になられた経緯は?

監督 大学の4年間はずっとロックバンドをやっていて、本当にダメな学生でした。お酒ばかり飲んで「ギターをかき鳴らしているのがロックだ!」という気分でいたんですが、ロックミュージシャンとして食べていくことの厳しさも知っていたし、そこにあえて挑戦していくほど上手かったわけでもない。いざ大学を出て、「さあ何をやろう」となったときに、「ネクタイ締めないで気楽に楽しそうな仕事って何だろう」と思って、たまたまテレビの制作会社に行ってみたら、向こうからも声をかけていただいたんです。「何をやりたいんだ?」と聞かれて、よくわかりもしないまま「監督」と答えたら助監督の7番目くらいにつけられて、それからテレビドラマの現場に行きました。当時も今も映画の助監督はフリーの人が多くて、「会社員じゃなくてもいいんだ」ということに気付いてからはその会社も辞めました。社員としてはほんの数か月でしたが、そのままフリーになって23、4年。他の多くの映画監督のように「大学で映研にいて、こういう映画監督になりたい」という想いを抱かずにこの世界に入ったので、助監督をしていくということが面白すぎた。助監督の中にも職分があって、カチンコ打って美術装飾担当して原稿を書くということをする人から、衣装メイク担当してエキストラつけて、と、セカンド・サード・チーフで役職が違うんですよ。そこで上がっていくには自分の力でのし上がるしかなく、それが楽しくて仕方ありませんでした。やはり上に上がれば上がるほど、いろいろと発言権が出てくるし、現場も作っていける。それをお客さんに届けるのが楽しかった。自分が映画監督になりたいと思ったのは、結構時間が経ってからのことでした。30歳過ぎた頃にチーフっていう現場の一番トップに立ち、スケジュールを管理して全体の指揮を執るようになったときに、「監督これでOKなんだ。もっといい絵もあるのに」とか「この芝居でいいの?!」みたいに思うようになり始めてしまったんです。どの監督の元についてもちょいちょい思うようになってから、「そうか俺、監督にならなきゃいけないんだ。監督やりたいんだ。そのために今までやってきたんだ。」とそこで初めて監督になろうと思いました。行き当たりばったりだったんですが、ここまでやってこれたのは思し召しというか、自分が(映画監督に)向いてたというか、水が合ったんだろうなと思います。

Q.杉作先生は元・プロボクサーから漫画家に転向されたということで、映画の中でもその流れは描かれていますが、具体的な心境の変化は?

先生 たしかにずっとボクシングを好きでやっていて、最初漫画家には全然見向きもしていませんでした。兄が漫画家ですごく上手かったので、自分はなれないだろうなと諦めていた部分もありましたね。見ていて大変そうだったし、「漫画家っていいなぁ」という、憧れ的なものもあまりなかった。ちゃんと考え始めたのは、ボクシングを辞めて、「何やろう?」「何やったらいいんだ?」と考えるようになってからですかね。これから何をやっていこうと真面目に考えて、このときは猫の漫画を描くなんて一切頭になかった。でも自分の一番取り組みやすいものを考えたときに、漫画が一番近かったのかな。監督もサラリーマンの話をされていましたけど、僕もサラリーマンの下っ端の会社についても先が見えてるというか、面白みがないと思ったんです。賭け事で言うなら、全然万馬券こないよ!みたいな。そんなの全然面白み感じられないし、なんか100円でひっくり返らないかなぁみたいに思ってたら、そのとき、やれることの面白さというより、挑戦的には面白いのは漫画だなと思った。

Q.見事ひっくり返せましたね。

先生 いや、まだまだ途中です(笑)

Q.学生の間にやっておけばよかったなぁと思うことは何ですか?

監督 青臭い事をしておいた方がいいと思います。「青臭い」ってあまりいい言葉ではないけれど、そのときその瞬間にしかできないことって絶対にあるんですよ。自分が映画作りの中で脚本書いたりするということは、スタッフや役者に対して自分のやりたいこと説明しなくてはならない。なので、どうしてこういう物語で、お客さんにどう伝えたいのかっていうのを説明する行為ばかり。それって自分の内面をさらけ出すことばかりで、先生も同じように漫画描くことで自分の内面を一生懸命絞り出してると思うんですけど…
先生 まさにその通りです。
監督 すると、意外と出てくるのは子どもの頃の風景だったり、小さい頃に感じた想いだったり、教えだったり、シンプルなものばかりが絞り出されてくるんです。学生のくらいまでの頃に感じたもの、考えたこと、悩んだことだったりするんです。なので、すごくお行儀よく生きないで、思うがままにいろんなもの見ていろんなこと感じて、ダメな生活を送ってもいいから青臭く生きた方がいいんじゃないかなと思いますね。お行儀よくなりすぎない方がいい。そしてその豊かな部分が、おっさんになったときに絞り出しても「お、まだもうちょっと出るな」ってところを作ってくれるんです。
先生 本当に、おっしゃる通りですよ。自分もそう思います。自分はあまり考えずに、勘だけでやってきたみたいなところがありますが、そのときのものがここ一番って時に芯の部分になっちゃってる。裸にしたときに出てきちゃう、みたいな感じです。だから若いときにできるだけ、自分の勘と感覚だけでやるのもいいと思います。

Q.実写映画ならではの見どころは?

先生 見てる時間を全部映画の空間にもっていかれる感じは、映画でしか味わえない。映画館に行って、ワッと惹きこまれる感じ。自分の中ではやっぱりあれが体験できるところが一番いいと思います。

監督 猫たちとの自然な触れ合いはもちろんですが、これは「前に進めない人が前に進んでいく物語」なんです。先生(主人公)ももがき苦しんで本当に大変だったと思います。ボクシングを諦めようと思っているのに結局ボクシング漫画描いちゃうっていうシーンは、先生の本物の原稿を使ってまして、当時描いても描いてもボツになってたそのままの原稿をお借りして撮影しました。物事は簡単にいくものではないし、諦め切れないものもずっとあっただろうし、ここは本当に雑に描きたくなかった。そんな人が自分の道を新しい道に切り替えることは大変で、乗り越えることも大変だけど、それでもいつか「乗り越えられる」ということを伝えられる映画だと思います。猫好きでない人たちでも、心温まったり、支えてくれる人の存在に気付かされる映画になっていると思うので、いろいろ感じてほしいなと思います。

■ガクシン記者感想
杉作先生、山本監督、御二方共にとても話しやすい方で、学生の私達に対しても真剣にお話をして下さいました。作中で描かれている「猫は単なるペットではなく、生き物。猫社会が存在し、病気もかかるし、いつか老いる。」ということを監督の言葉で聞き、改めてハッと気付かされました。又、杉作先生には、「一つのことで悔しい思いをしても、一発逆転!をする為に努力するということの大切さ。」を学ばせて頂きました。
写真撮影では、御二方共に映画にちなんだネコポーズを恥じらいながらも披露して頂き、とても楽しく有意義な取材を行うことが出来ました。(塚本真美理:同志社大学4回生)

CIMG0518
左→塚本真美理(同志社大学4回生)、杉作先生、山本透監督、日下千恵子(佛教大学4回生)

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