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「5454」とかいてランドリーと読む。ゴシゴシと洗濯物を洗い上げるように、観た人の気分をさっぱりと洗い上げる、そんな作品を創ろうという決心のもと、結成された劇団5454。今回は5454の、第11回公演「好き」から、その魅力を紐解いてゆく。作・演出の春陽漁介さんにお話をお伺いしました。
藤井:劇団紹介に『誰もが見聞きする人や事を、心理学や社会学、物理学を使って掘り下げる』とありましたので、難しいお話なのかなぁと思っていたら、そうではなくってラップや、色んな作品のオマージュが入ったミュージカルが組み込まれており、すごく観やすく分かり易くて楽しかったなぁと思いました。
春陽さん(以下春陽):そうですね、社会学や心理学、それに今回は哲学寄りだったんですけど、哲学も、難しく考えずフラットに、人生を生きるため散りばめられていくものだと思ってます。ラップやミュージカルはいつも入れているわけではありません。笑えるんですよね、ミュージカルって。だから入れているんです。人目を憚らず恋愛をどこまでも表現し、発散していく。ある瞬間に入って来るカップルと、ただ偏屈に内側で考える主人公と対比させる。そうすると、誰も馬鹿にはなりたくはないから、主人公に少し寄り添い易くなる。
初めのはラップといいますかポエトリリーディングというメロディに詞をのせていく手法です。表現をしたくないキャラクター(主人公)がどういう表現をしたら面白いのかというところから入って、あの構成になりました。ああいう人の語り、言葉には力があるから、見やすさとしてもリズムがあるほうが良いので。
藤井:なるほど、そのポエトリリーディングは冒頭とラストシーンで同じ場面で少し変化する、という対比にもなっていますよね。
春陽:はい、だけどちょっとしか変わらない。たった2時間で人は変わらないし、演劇がそんなに人を変えられるとは思ってないです。でも新しいスタート、明日を生きるためのヒントを何か受け取ってもらえたら、ピックアップしてもらえたら、と思って。
藤井:ありがとうございます。今作のテーマを言うとすれば何でしょうか?
春陽:「好き」って、タイトルなんでそのままなんですけど、毎回、使う題材はお客さんにこれから生きて行く上で思い出してもらえたり、何か消化してもらえたらいいな、というものですね。登場人物によってそれぞれテーマが散らばっているので、観た人におまかせしてます。が、ただ投げっぱなしではなく、一応今回で言えば「好き、とは解放である」、と答えを出してはいますよね。それは違う、って思う人がいてくれていい。僕はその答えが伝わってくれって思ってるんじゃないんです。
藤井:今作を作るきっかけとなったものがありましたか?
春陽:「好き」って言葉が使われすぎてダサいものになってるじゃないですか。小さい頃は純粋に好きと言っていたのにいつの間にか多用されてきて、大切だった言葉が大切じゃなくなってきたのが嫌だった。「好き」って言葉を自分のものとして取り戻したいなって気持ちで作り始めました。スタートのモチベーションは言葉への執着、自分の使ってる言葉くらいコントロールしたいな、大切にしたいな、という気持ちはこの作品に込めてますね。
藤井:有難うございました!
取材後記
「好き」、現代では誰もが便利なものとして扱う言葉になっている。それが安売りされず、大切に使われていた旧き良き時代もあったりしたものだなぁと、開演前に舞台で主人公がThe Beatlesを聴いていたところで思い出されたりする。また凝られているなぁと感じたのは、主人公が告白をするシーン。青春は走るものだと彼の親友は言っていたが、舞台の上だという都合上、主人公は全力疾走することができない。そこで彼はある事をする。それがこの「好き」での疾走シーンになっているのだが、こういった演出の技がキラリと散りばめられている劇団5454の公演。難しい題材を使って日常を掘り下げつつ、人々に届けてくれる舞台。読者の皆様にも、是非一度、それを目の当たりにしてみて欲しい。
劇団5454ホームページ
春陽漁介 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/
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