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ミュージックインタビュー

『OKAMOTO’S』ミュージックインタビュー

ーアルバム発売を受けて今回のインタビューですが、まずアルバムに込められた思い、はじめて聞く人に向けてどういう風に伝えたいと思って作られましたか?

ショウ まず今回は変わったアルバムをつくろうということで、1曲目から最後までを通して1つのストーリーを持ったアルバムになりました。なのでアルバムには主人公が1人居る。歌詞でもストーリーを追っていくし、曲もそういう風に追っていく。ストーリーに沿って曲が展開していくアルバムなので、音楽ももちろん、そのストーリー、物語を楽しんで貰えたらいいなというのが今回の試みです。

ーということは一曲ずつ順番に上から作って歌詞も書かれていったんですか?

ショウ そういうことですね。辻褄を合わせていかないといけない部分があるので、間を埋めたり、やっぱりここはこういう展開にしようという変更は多々ありました。今回物語をアルバムや歌詞だけで聴いてもらってもいいけど、どうしてもそれだと伝えきれない部分があるなと感じて、物語を小説化したものを特設HPで一部公開しています。映画の予告編を見てから映画を見る、ということと一緒で、ある程度その物語を知った上でアルバムを聴いてもらった方がもっとアルバムを楽しめるんじゃないかと思いまして。なので、俺たちを知らない人は、アルバムを聴いたり音楽を楽しむということはもちろん、小説としても楽しんでもらったり、是非音楽以外の楽しみ方をこの作品から受け取ってもらえたらうれしいです。

ーオペラとか物語とかにこだわられた理由ってなにかありますか?

ハマ 岸田さんにプロデュースをしてもらった「Dance With Me」という楽曲があって、その曲がすごく物語調というか一曲の中に様々な景色があるような出来になったので、その曲を物語の最後に持ってきて、そこまでの話をつくろうということで話が進みました。なので、こだわったというより、物語にしようということを思いついて、だったら全体的にこうしようという流れです。ロック・オペラと昔から呼ばれているフォーマットがあるので、そこは継承してそう呼ぼうということにして作っていきました。

ー今回のアルバムのカギ・ケータイ・サイフをなくすという”現代版・三重苦”の設定はどういう風に考えていったんですか?

ショウ 継承元のThe Whoの『Tommy』というアルバムがロック・オペラというものの代名詞と呼べるアルバムかなと思うんですけど、そのアルバムの主人公は幼少期のトラウマによって目が見えない、耳が聴こえない、喋れないという三重苦を背負っているんです。
ハマ コンセプトとしてわかりやすいし、その3つがなくなるみたいなことがいいよねという話になって、カギ・ケータイ・サイフをなくすっていうあまり年齢関係なく誰しも経験があったり、話を聞いたことがあるような設定にしました。あとショウがわりとしょっちゅうものをなくすということもありまして。なので半分実話の様な感じでテーマとして放り込んだんですけど、僕らだけの話に限らず、結構皆にきちんと共感出来ることにするということにもこだわりました。現代版三種の神器みたいなものだと思います。
ショウ 難しい話にしたいわけじゃないのですが、困ったことがあったらあいつに連絡しようと考えたり、誰がどこにいるかなど、そういう日常で当たり前に自分が持っている繋がりが実は、こういうささいなきっかけで簡単に失くしてしまう、「そもそもあった時から実は私は一人だったのかもしれない」と感じたり、そういうものがない時代では当たり前の状態だけど、それがなくなることで異様な不安感があるという、現代だからこその怖さを今のバンドだからこそ伝えられたらいいなとは思っていてその3つ選びました。

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ー今回のアルバムはストーリーのあるものになっていますが、制作の様子など、どのように作られたのか教えていただけますか?

ショウ 今までのアルバム制作では「この曲やってみようよ」「この曲良いね、次のアルバムに入れようよ」とピックアップしたものを集めたり、厳選したデモからメンバーで作り込んでいき、それから曲順やタイトルを話し合って決めるという作り方が多くて。
でも、コンセプト・アルバムを作るとなるとストーリーに基づいた楽曲だけを選ばないといけない。そもそも「こういう物語で次のアルバムを作りたいと思ってるけど、どう?」とメンバーに提案するにしても、俺達は脚本家ではないのである程度曲の骨組みを自分の家で弾き語りや、パソコン上で組み上げたりして作ったデモを聴かせながら提案しないと、絶対「なにそれ」と言われてしまうし良し悪しが判断できないので、普段とは違いただ作って録ったというよりもかなり早い段階で曲順や歌詞・展開を考えてから楽曲を並べてみて、大まかに形になったものをみんなに提案する、というところから作っていきました。なので、骨組みの構築にものすごく時間がかかりました。それを10代の頃からずっと一緒にやっているメンバー4人で共有するところまではいいんですけど、スタジオに入る前に今度はスタッフ陣に伝えないといけない。ストーリーがあるアルバムを作るのは普通のアルバムを作ることに比べると面倒なことなので、「これだったら普通のアルバムでいいじゃん」と言われない、「これストーリーがあった方がいいね」と言わせられるぐらいのデモを作らないといけないし、スタッフも含めてみんなが一丸となるには、それを「いいね」とスタッフみんなが思える伝え方をしないといけないので大変でした。ただ、その作業を経ることによって土台がすごくしっかりしたものができていたのでレコーディングの実作業はとてもスムーズに運びました。新しく思いついたことを試す時間もたっぷりできましたし、結果的に俺達にとってはすごくいい作業になりましたが、勢いだけでは出来ない少し面倒な面もありましたね。

ーデモ作業の時にメンバーやスタッフの方からは色々言われたりしたんですか?

ショウ 電車の音から車掌さんの声、セリフも全部一人でやっていて、たまに声が”コロ助”みたいに高くなったりもしていたので、「気が狂ってるね」と思われたんじゃないですかね。基本的にデモは俺とコウキが中心になって作って、それを4人で揉んでいくんですけど、今回はコウキと一緒に作りたかったので、まだデモもなにもない状態で「主人公はさ~、多分同い年ぐらいで~すごい駄目な人間なんだよ、更にとにかく酒が好きなんだよ」と、わけのわからない話だったり、まだ出来上がっていないわけのわからないデモの断片のようなものを聴かせ続けたせいで多分相当混乱したと思いますね。でもそこを頑張って理解しようとしてくれたからこそ、今回半々くらいでお互いの曲を入れることができました。

ーこれからツアーを回ると思うのですが、アルバムの世界観は再現されるのですか?

ショウ こういうアルバムを作ると完全再現ライヴの様なステージを期待すると思います。
ただ、そこには色々と準備が必要で、バンド以外のキーボードやストリングスも欲しかったり、「もしかしたら演技をする人が前に居た方が面白いかも」「お客さんにある程度アルバムが届いた後の方がいいな」と思ったり、きちんと準備をして万全の状態で披露したいので次のツアーはこれまでの俺達のライヴのイメージを更に昇華させたステージになると思います。そこに新曲たちが物語から切り離された状態で披露されて、どう活きてくるかを楽しんでもらうという感じです。なので一曲目からザーッとやられるんじゃないかと気負わずに、たくさんの人に遊びに来てもらいたいです。「この曲こんなに盛り上がるんだ」と、アルバムで聴くのとはまた違った表情を見せることができると思うので。今回のアルバムはライヴのことを考えずに、ヘッドフォンやスピーカーで聴く時にどういう風にすれば一番輝くかを考えて作ったので、だからこそ、ライヴではライヴで一番輝く方法で楽曲を演奏しようと思っています。

ー今アルバムを出すというところでメディアだったりツアーの準備で忙しいと思うのですが、もし一段落したら音楽の方でどうやって行きたいのかっていうのはありますか?

ショウ 俺たちはずっと音楽が好きで、昔からレコードを買ったりするような音楽オタクなので、アルバムを一枚聴くということは昔からやってきていたし、そこへのパワーを信じてるというか、一つのエンターテイメントだと思っているんですよ。でも映画を観たり、小説・漫画を読んだり、そういうことに比べて音楽は耳だけじゃないですか。アルバムを一枚家でじっくり聴くことで体が満足するような人が少ないような気がしていて。
ハマ スマホが出て、タッチパネルが出来て、券売機もボタンだったものがタッチパネルになった。スマホは触れるし、音も聞こえるし、絵が動くし、そういうものに日常的に触れていると、きっと現代を生きている僕らは体が満足しないんですよ。要は、ただ家で座って何も触らずにじっくり何かを聴くという行為がいかに体的に刺激がないか。家でぼーっとすることも実はなくなってきている気がして。すぐ何かしらに触ってしまうじゃないですか。スマホだったりパソコンだったり。だからきっと「なにもしない」ということの我慢が出来なくなって、音楽はBGM化していっているんだと思います。最近一曲買いが増えたり、ストリーミングで聴く機能が増えたり、「好きな曲だけ流して聴いとけばいいか」と、そのくらいでとどまってしまっているのはそういう理由なんだろうなと個人的に思っていまして。もちろんライヴは同時に「目」で観るじゃないですか。なので別物だと思いますが、家ないしポータブルプレイヤーで聴くということに関して言うと、そういうことをいよいよ考えていかないといけないなと思います。ただ「アルバムが出た、それを聴いてほしい」 それだけでは届かない世の中になっているなと思ったので、何かプラスアルファをみなさんに提示したくて今回小説本を出したり、連動性を持たせたものを作ってみたんです。
ショウ もう「演奏がかっこよくて曲が素敵で歌詞がグッと来る」というだけで腰を据えて聴いてくれる人はどのくらい居るんだろうと思っています。
ハマ 届きづらくなってるんだよね。
ショウ そう。時代に文句をつける気は無くて。逆に一曲のバラ売りで一気に広められる時代でもあるだろうし。だからこそ俺達もただCDをリリースするだけではなくて、最後は音楽だけで楽しんでもらうことになるとしてもそれ以外の入口や、他の楽しみ方もできるように今回考えることが出来ました。なので、何年後かにこれが映画化することになったり、さっき話した”舞台でライヴをやってみたい”という目論見だったり、このアルバムを軸として色々な楽しみ方ができるコンテンツになって、音楽だけで完結しないものを少しずつバンドからも発信して行くことが今の時代に合ってるのかもしれないと思ったり。自分たちがOKAMOTO’Sという一種のコンテンツになりたいっていうか。今後エンターテイメントとしてのより幅広い何かができればいいなと思います。

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ーアルバムだとストーリー性や歌詞の流れを表しやすくなると思うんですけど、そういう思いを持った上でシングルとか、一枚・一曲だけの発売という事になった時に気を付けたい点、工夫したい点はありますか?

ハマ 今回こういうアルバムをリリースしたので、次のシングルは自ずと音楽以外のことを自然と要求されると思います。次が普通のリリースだとしても「何かしてくれるんじゃないか」と期待してくれる層が少しは増えると思うので、ビデオやジャケットをより気を抜かず作っていくのが第一ですね。「水曜日のカンパネラ」というアーティストがいて、新品のシングルをヤフオクに出すんです。それを100円でスタートさせて、欲しい人がどんどん値段をつけていく。なので、100円で落札されたものもあれば、競りに競って1500円になったものもあるし、iTunesも一日ごとに値段が変わっていくように設定していたり。まだこう思ってからリリースをしていないので考えないといけないなと思っています。そういう中で今回の小説と連動してるということに関しては、すごく新しいことをやってやったなと思っていて。これがどういう風に広まっていくかが楽しみなんです。
あとは、シングルで新曲が2曲ぐらい入っていて、3曲目が40分くらいあるライヴが一本のトラックで収録されている音源なんかもいいですね。あれミュージシャンが考え始めたことなんですよ。
ショウ 会社でCDを作ったり、宣伝したりする大人達がもっと新しい何かを開発して音をエンターテイメントとして売る方法を考えているのかと思っていましたが、案外皆CDを売るということばかりにフォーカスしているので、ミュージシャンがどんどん新しいものを提案している様に見えますね。
ハマ だから予想もしてなかった新しいものが出てくるのかもしれないですよね。U2というバンドが、ずっと「アップルと色々な新しい音楽サービスを考えている」と何年も言い続けていて、嘘ついてるのかなと思うくらい発表されているんですよ。それが公になったら様々なことが覆るかもしれないですし。
ショウ かと思えば、ホワイト・ストライプスというバンドをやっていたジャック・ホワイトは、インスタントレコードの様な、ペラペラの何回か聴くと聴けなくなってしまうようなレコードを200枚くらい風船に括りつけて「まだ出てない新曲」として空に飛ばして、拾った人だけが聴けるというものすごくアナログな方法をとっていたり。
ハマ 売れない時代と言われているからこそ、逆に作り手がすごく考えている時代なので面白いものはどんどん出てくると思います。国内外問わず。
ショウ 俺らも今回やったような新しいものを更に作っていけたらいいなと思います。

ーアルバムの中であの曲のあの場面が好きみたいなのありますか?

ハマ 作曲に携わった「うまくやれ」という楽曲の中に、改札を出た後街中でばったり出会う先輩に小言を言われるシーンがあるんです。すごく好きな事や部活など、自分の方が圧倒的にある事柄に対して好きなのに少しの能力の差で自分より輝いていたり自分より注目されている人が居るとすごく歯がゆい気持ちになると思いますが、その中で「いやいや全然私の方が…」と言ってる人が大概ものすごくうまくやっているんですよね。外面なんかもそうですし、実際実績も伴っていたりして。そういうことへのジレンマの様ことを歌った曲なんです。簡単に言うとムカつく奴っていうだけの話で、こういう奴居るよなーという先輩の歌なんですけど、結構好きです。アルバムの曲は大体が日常によくあることなんですけどね。その中でも一番。出てくるのは男性ですが、女性でもそういう先輩が居るでしょうし。
ショウ 俺が書いていた歌詞を見て、ハマが「この歌詞すごくいい」ってメロディをつけていった曲なんです。
俺が気に入っているのはKnock Knock Knockかな…。アルバムの流れとして聴いてほしい曲でありながら、その一曲だけで聴いても筋が通るようになっていて、楽曲的にもなんだこれと感じる様な展開を作れたので気に入ってます。

ー最後に学生に向けて何か一言いただけますか?

ハマ 僕たちの過去の作品の中では一番みなさんに共感してもらえる内容であり、歌詞でありになっていると思うので、みなさんに響けばいいなと思っています。
ショウ 主に俺やコウキの実体験を元に組み上がっているほぼ実体験なので、大学生ではじめてそういう事態になってしまった人たちにとってのバイブルになったらいいなと思っています。お前だけじゃないよって俺も言ってもらいたいし、言ってあげたい気持ちです。

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ガクシン記者感想
カギ・ケータイ・サイフをなくすという現代版・三重苦を歌い、音楽だけではない楽しみ方を提供できるのは、現代を生きるバンドOKAMOTO’Sだからこそ伝えることのできるものだと感じました。インタビューを通して、今作に対する熱い思いや枠にとらわれない音楽に対する考え方を伺い、今後のOKAMOTO’Sの展開にも目が離せないなと思いました。(橋本美沙希:産業大学4回生)

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6th アルバム『OPERA』
9月30日発売/通常盤2,870円+税
『OPERA』特設HP▷ http://www.okamotos.net/special/opera/

※9月時点でのインタビュー

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